テントをタープで完全に覆う張り方を「過保護張り」といいます。強い雨が降っている日など、悪天候時にはとくに効果を発揮する張り方です。
本記事では、写真付きで以下について解説します。
雨天でも快適にキャンプを楽しみたい方は、ぜひ参考にしてください。
アウトドアブランドのWAQでは、水や火の粉に強いTC素材を使用した「ワンポールテント」や「ヘキサタープ」を販売しています。
ソロ〜ファミリーまで楽しめるサイズをご用意しているので、ぜひこの機会に公式ストアをご覧ください。
過保護張りとは
「過保護張り」とは、テントを完全に覆うようにタープを張り、タープとテントの二重構造を作り出す張り方です。
テントを守っているように見える張り方のため、「過保護張り」という名前がつけられています。
過保護張りの目的
過保護張りの目的をひとことでいってしまえば「雨などからテントを守るため」です。
雨の日にテントを張るのは大変な作業です。
そのようなときにテントと比べて設営がかんたんなタープさえ先に立ててしまえば、テント設営を含めたその他すべての作業がタープ下で完結します。
また、インナーテントがないタイプのテントでは、結露防止の効果も期待できます。
とくに、防水性に若干の不安がある安価なテントなどを雨天時に使う場合には、非常に頼りになる張り方です。十分に防水性能を確保したテントの場合でも、豪雨のときなどはテントとタープを二重にすることで、雨による影響を減らすことにもつながります。
大切なテントを少しでも雨にさらしたくないという場合などは、重宝する張り方といえるでしょう。
過保護張りと似ている張り方
下記画像のように、タープの下に完全にテントをかくし、二重構造でテントを張るのが「過保護張り」です。
この過保護張りと似たような張り方には、以下の2つが挙げられます。
- 小川張り
- カンガルースタイル
ここでは、それぞれの張り方と、どのような点が過保護張りと違うのかについて解説します。
小川張り
小川張りは、テントの天頂部分がタープの下に入るか入らないかのギリギリのところにテントを設営します。
テントの反対側にポールを立てて、テントの天頂部を超えて専用のロープやベルトによって引っ張りながら設営します。
小川張りの具体的な張り方の手順を確認したい方は、下記の記事も参考にご覧ください。画像付きで手順を解説しています。
>>ワンポールテントとタープで小川張り|張り方を画像付きで解説!
カンガルースタイル
カンガルースタイルは、大型テントの中に小型テントを設営する張り方です。
大小のテントが親子の関係になるさまを、カンガルーの親が自分のお腹にある袋の中に子どもを入れることを模した言葉です。
上に張るのがタープではなく大型テントなのが過保護張りとの大きな違いですが、目的は両者ともに似たようなものといえるでしょう。
また、大型のテント内に複数の小型テントを立て、各々のプライバシーを確保するために利用されることもあります。
過保護張りのデメリット
テントやキャンプギア、人を守るために使われる過保護張りですが、いくつかのデメリットも存在します。
ここでは、過保護張りの各デメリットについて解説します。
デメリット1 大規模なサイト設計には向かない
過保護張りの場合は、タープ下のスペースが制限されるので、5〜6人以上の大人数用テントを張るのは難しいです。そのため、大人数での使用を想定した大規模なサイト設計には向いていません。
過保護張りはソロやデュオなどの小規模キャンプで、雨の中ひっそりとテントにこもりながら楽しむのに向いている張り方です。
もしも、ファミリーキャンプやグループキャンプなど大人数で1つのサイトを構成したいのであれば、大型のロッジシェルター型テントを利用したほうが、はるかに効率的といえそうです。
デメリット2 リビングスペースが極端に狭くなる
タープを張る目的は、「広くて快適なリビングスペースを作り出すこと」ではないでしょうか。
しかし、過保護張りの場合は、テントを守るのが目的です。
タープの有効面積のほとんどをテントが占める過保護張りの場合は、広くて快適なリビングスペースはあきらめざるをえないでしょう。
デメリット3 横殴りの雨(強風時)には効果がない
過保護張りは、テントに直接雨が当たるのを防げるので、テントのもつ防水性能をはるかに上回る耐水性能が確保できます。
ただし、横殴りに降ってくる雨にはあらがうことはできません。
たとえタープの両サイドを極端に低くして地面すれすれに設営したとしても、風向きが変わって入り口から強烈な雨が吹き付けてくる可能性もあります。
命の危険を感じるほどの豪雨&強風の場合には、あきらめて撤収しましょう。
【写真付き】過保護張りの手順
ここからは過保護張りの手順について、画像付きで解説します。
なお、今回の撮影では、WAQのヘキサタープ「HEXATARP TC(Lサイズ)」と、ソロ用のワンポールテント「Alpha T/C」を使用しました。
どちらも雨や火の粉に強いTC素材を使用しています。この機会にぜひ公式ストアもご覧ください。
まずは、タープを設営します。
タープの張り方は、その日の天候にあわせるのがポイントです。サブポールを使ってスペースを広く取ったり、両サイドを下げてできるだけ風を避けたりするなど、適宜調整してください。
タープ設営時は、雨水の流れを意識するのもポイントです。
なお、タープの設営に慣れておらず不安がある方は「1人でもかんたんにできるヘキサタープの張り方」を解説したこちらの記事もあわせてご覧ください。写真付きで手順を詳しく紹介しています。
次に、テント全体がタープ下に収まるようにテントを広げて、設営する位置を決めます。
撮影時は、タープの余白が少しでも大きく取れるように、タープのポールにテントがあたらないギリギリのところにあたりをとりました。
雨量が多いときは、タープ中央にテントがくるように配置するのがおすすめです。
テントの設置場所が決まったら、四隅をペグダウンしてテント位置を固定します。
あとは、通常のワンポールテントを立てるときと同様に、センターポールを立ててから補助ロープなどもすべて固定してください。確実に固定することで安全面も確保されます。
テントがしっかりと立ち上がったら、もう一度ロープの張りやペグの刺さり具合を確認します。必要に応じてしっかりと調整すれば、完成です。
雨が降っている中で設営する場合は、タープやテントの幕体とロープが雨に濡れることにより、若干の収縮が考えられます。ロープの張り具合には入念なチェックを心がけましょう。
過保護張りの実際の使用感
過保護張りの張り方そのものは、小川張りよりもはるかにかんたんです。タープとテントそれぞれの張り方に慣れている人であれば、かんたんに設営できるでしょう。
タープ表面は結露で少し濡れていましたが、テントの表面はほとんど濡れておらず、中で寝ているときに結露のしずくに悩まされるような状況は皆無でした。
また、布が二重に設営されている分、テント内の遮光性もアップします。日中にテント内で昼寝をしようと思えば時間を忘れて眠れそうなくらい、しっかりと太陽の光を遮ることができました。
過保護張りのポイント
次は実際の過保護張りの使用感と、設営時のポイントについて解説します。
タープとテントの大きさに注意する
過保護張りで注意したいのは、タープとテントの大きさを考えることです
テントを十分に覆えるくらい、大きなサイズのタープが必要です。
ソロキャンプ用の小さいタープだと、テントの端をタープからはみ出させたところで、リビングスペースはほとんど作り出せません。せいぜい出入りのための前室といった程度です。
なお、今回の撮影で使用したヘキサタープとテントの大きさは、以下のとおりです。
HEXATARP TC(Lサイズ) | Alpha T/C |
470cm×480cm (4〜6人用サイズ) |
240cm×240cm (1人用サイズ) |
4〜6人用のタープと1人用のテントの組み合せだと、下の画像のようにリビングスペースにゆとりがあります。
このくらいのリビングスペースがあれば、1人で利用する分には快適といえるでしょう。
なお、WAQの「HEXATARP TC」には、1〜3人用のMサイズ(330cm×340cm)もあります。
「HEXATARP TC」Mサイズと1人用の「Alpha T/C」とを組み合わせると、以下のようにタープ下の有効面積のほとんどがテントで埋まってしまいます。
過保護張りでも快適性を加味したいのであれば、タープとテントの大きさを考慮しましょう。
過保護張り向きなテントの種類
今回の撮影では、WAQのソロキャンプ用ワンポールテント「Alpha T/C」を利用しました。
ワンポールテントは、大きなサイズのものになればなるほど、天頂部も高くなります。そのため、ワンポールテントを使って過保護張りをする場合は、1人〜2人用のサイズ感が限界といえるでしょう。
サイズが心配な場合は、あまり背が高くないテントとの組み合わせがおすすめです。
以下に挙げるテントであれば、過保護張りとの相性はよいといえます。
- シェルターテント:床のない簡易的なテント
- ポップアップテント:ワンタッチで立ち上がる小型テント
- ドームテント:1~2人用サイズの小型テント
- パップテント:別名「軍幕」テントで開放的な低身長テント
下の記事では、中型サイズのドームテントとヘキサタープの組み合わせ方を紹介しています。過保護張りについても紹介しているので、ぜひこちらもあわせてご覧ください。
過保護張りのおすすめアレンジ
過保護張りを楽しむのであれば、次のようなアレンジを試してみるのもおすすめです。
例えば、大型のタープを用意して、その下に小さなシェルターテントやドームテントを複数張れば、カンガルースタイルのような使い方も試せます。
テントの入り口を内側に向けて張れば、外部からの雨風を防いだ食事スペースを作り出すことも可能です。
また、オートキャンプ場などでみかける、テントを張るための木製の土台がついているサイトでは、過保護張りの効力は一層増します。
森林フィールドだと、木立をポール代わりに利用することによって、さらに自由度の高い過保護張りのスタイルが楽しめますよ。
過保護張りするときに用意したい3つのアイテム
過保護張りでキャンプをする場合に、あわせて用意するのがおすすめな道具をご紹介します。
①インナーテント
まずは、テントのインナースペースなどの下に敷く、バスタブ型のグランドシートです。
通常のグランドシートと違って、シートの端が立ち上がっているため、全体的な形が浅く広いバスタブのような構造になっています。
そのため、地面が多少水浸しになるような状況でも、テント内に水が侵入して荷物や寝床をぬらしてしまうことを防いでくれるでしょう。
②荷物用ラック
次は、荷物用のラックです。
荷物用ラックを用意して、トランクボックスやクーラーボックスを地面に直接触れないようにすれば、大切な荷物が雨で台無しになる確率も低くなります。
上記の写真では、折りたたみ式のシューズラックを利用しています。
キャンプ用の専門道具もあわせてさまざまな選択肢がありますので、あれこれと工夫してみてください。
③雨具と長靴
最後は、雨具と長靴です。
すでに雨の降るなかタープを張る場合、雨にさらされながら作業をしなければなりません。
雨の中でも動きやすいように、レインウェアやシューズ、レインハットなどを用意しておきましょう。
なお、これらの雨具グッズは、過保護張りをするときだけでなく、急な天候の変化を想定したキャンプの基本的な備えとしてもおすすめします。
雨の日のキャンプで注意すべきことやテント設営ポイントについては、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
>>【キャンプ雨対策】雨天時のテント設営と撤収、必需品アイテムを紹介
過保護張りを覚えて安全にキャンプを楽しもう
過保護張りは、雨の中でもテントを守り、少しでも安全かつ快適にキャンプをするための手段の1つです。
ただし、過保護張りは雨に強い張り方ではあるものの、弱点もあり完全に安全だといえるものではありません。
あまりに雨が強いとき、または強風をともなう雨のときには、「安全に過ごすことよりも、安全に帰ること」を最優先して、キャンプをあきらめたり早々に撤収したりすることを視野にいれるようにしてください。
雨で濡れたあとのタープやテントはしっかりと手入れする必要があります。下の記事では、手入れが必要な理由や、具体的なお手入れ方法について解説しているので、あわせてご覧ください。
>>テントの洗い方や基本的なお手入れ方法|コインランドリーや洗濯機がダメな理由も解説
今回の撮影で使用したWAQのヘキサタープについて、さらに詳しく知りたいという方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
>>WAQ「HEXATARP TC」の特徴|おすすめする7つの理由とレビュー紹介