キャンプに必ずついて回るのが「撤収作業」です。キャンプ初心者の中には、「寝袋がスムーズに収納袋に入らない……」など、苦戦した経験がある人もいるのではないでしょうか。
寝袋の収納袋は比較的小さめに作られており、おまけに広げた寝袋には空気も入り込んでいます。寝袋の収納は、意外と一筋縄にはいかないのです。
そこで今回は、「寝袋をうまく収納する方法」を、下記のポイントに沿って紹介します。
- 寝袋の種類と特徴
- 素材別の寝袋のたたみ方
- 寝袋の収納に便利なアイテム2選
寝袋は、素材によって「適したたたみ方」と「コツ」があります。
間違ったたたみ方をすると、寝袋の快適性に直結する「保温機能」が損なわれる可能性もあるので、「適したたたみ方」をすることは非常に重要です。
今回は、登山歴10年の筆者が、素材別に「寝袋のたたみ方」をステップ形式で紹介します。コツさえ押さえてしまえば、まったく難しくないので安心してくださいね。
この記事を読んで、素材別の「正しいたたみ方」を押さえ、「スムーズな撤収」ができるようになりましょう!
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【知識】寝袋の種類(素材別)と特徴
寝袋には、「化繊(化学繊維)」と「ダウン」の2つの素材があります。
そもそも「繊維」は、「化繊(化学繊維)」と「天然繊維」の大きく2種類に分けられます。つまり、「天然のものか」「人工のものか」です。
寝袋は、素材によってたたみ方が異なります。まずは素材の違いや特徴を押さえていきましょう。
【素材①】化繊(化学繊維)
1つ目は「化繊(化学繊維)」です。(※以降、「化学繊維」は「化繊」の表記で統一)
化繊の主なものは「アクリル」「ナイロン」「ポリエステル」などが挙げられます。ニットやシャツなどの服についているタグでよく見かける素材ですね。
化繊のメリット・デメリットは下記のとおりです。
メリット | デメリット |
水に強い 手入れがかんたん 安く手に入れられる |
重い かさばりやすい |
耐水性が高く濡れても保温性が落ちにくく、洋服のように洗濯ができて、メンテナンスが楽なのがメリットです。
しかし、寝袋のように素材をたくさん使用する大型のギアになると、「重量感」を感じるようになります。
車で移動することの多いオートキャンプなどの場合だと、重量感は問題にならないかもしれません。しかし、宿泊道具をすべて自分で背負う必要がある登山や徒歩キャンプなどでは、この「重い」「かさばりやすい」という点は大きなハンデになります。
【素材②】ダウン
もう一つの素材はダウンジャケットなどでもお馴染みの「ダウン」。「天然繊維」になります。
「水鳥の綿毛」のことです。羽軸がない部分のため柔らかく軽量、かつ毛と毛が互いに絡み合わないという特徴があり、空気を多く溜め込むことができます。綿毛にたくさんの空気を溜め込むことで、ふんわりとかさが高くなり、その空気の層によって保温効果が高まるという仕組みです。
ダウン素材のメリット・デメリットは、下記のとおりです。
メリット | デメリット |
温かい 軽い コンパクト |
価格が高め 水に強い 洗濯時は専用の洗剤が必要 |
化繊に比べると空気を多く溜め込み空気の層ができて温かいのが最大のメリットです。空気を抜くとコンパクトに収納できるため、登山や徒歩キャンプではとくに重宝します。
ただし、天然素材ということもあり価格は高め。おまけに濡れると保温性が低下してしまうため、取り扱いには注意する必要があります。
デメリットの中にある「洗濯時は専用の洗剤が必要」について補足しておくと、寝袋の洗濯頻度は一般的に「30〜50回の使用につき1回」でOKとされています。頻繁に洗うものではないため、あまり大きなデメリットと考える必要はありません。
【素材別】寝袋のたたみ方とコツ
次は、化繊素材とダウン素材、それぞれの「たたみ方」を解説します。
素材によりたたみ方がまったく異なるので、ここでは素材別に、「手順」「コツ」「押さえておきたいポイント」の3つに分けてお伝えします。
一言でいうと、「化繊は丁寧に、ダウンは無造作に」です。
「化繊(化学繊維)素材」のたたみ方
ではまず、「化繊」からいきましょう。
手順とコツ
化繊素材の寝袋をたたむ手順は、4ステップです。
- タテ半分に折り曲げる
- 端から巻く。巻き始めは特に強く固く巻いていく (「芯」になるのでココはポイント)
- 膝で押さえながら巻いていく (再度膨らんでくるのを押さえる)
- 巻き終えたらベルトや紐などで2〜3箇所をとめて、かさが戻らないようにする (袋に収納しやすいサイズを保つ)
押さえておきたいポイント
次に、たたむにあたっての「押さえておきたいポイント」です。
ここであえてポイントをお伝えするのは意図があります。それは、「なぜ、そうする必要があるのか?」という物事の裏にある「理由」を理解することで、アウトドアやキャンプを、より深く楽しむことができるからです。
「なぜ、化繊は丁寧にたたむ必要があるのか?」ポイントは下記です。
化繊は無造作に詰めると繊維が折れてしまう
↓
繊維が折れると、保温性に直結する「かさの高さ」が失われてしまう
↓
かさの高さが失われるということは、つまり「保温機能が低下」する
以上のことから、繊維が折れないように「丁寧にたたむ」ことが大事なのです。
キャンプをはじめ、アウトドアが好きな人は好奇心が高い人も多いのではないでしょうか。好奇心をもって「物事を一歩深く知る」ことで、キャンプやアウトドアはより面白くなるはずです。ぜひ「なぜ?」を深掘りしてみてくださいね。
「ダウン素材」のたたみ方
次に「ダウン」のたたみ方です。
手順とコツ
ダウンについては、実は複数のステップはありません。ワンステップのみ!
- 足側から「無造作に」ぎゅうぎゅうに詰め込んでいく(押し込んでいく)
以上!
ただし、下記のように、いくつかの「コツ」があります。
- 寝袋全体の空気を抜いてから詰め込む
- 空気を抜いたあとはスピード重視でどんどん詰める!
- 足側から詰めていく(頭側のほうが大きいので空気が抜けやすい)
- 収納袋がキツくなってきたら、隙間を埋めていくイメージで回しながら入れる
ダウン素材の寝袋は、ダウンのかさの高さを示す”フィルパワー”が高い、つまり”良いダウン”ほどすぐ膨らむので、収納は時間との戦いです。折り畳んでもOKなので、空気を抜いたらとにかく早く収納袋に詰め込んでいきましょう!
押さえておきたいポイント
化繊では「丁寧にたたむ」必要があったのに、「なぜ、ダウンは無造作に詰め込んでもいいのか?」疑問に思われる方もいるかもしれません。ここでも「なぜ?」を一つずつ深掘りしてみましょう。
ダウン素材を長持ちさせる秘訣は「空気を均等に行き渡わせる」ことだから
↓
「無造作に収納」することで素材全体に空気が均等に行き渡るから
↓
それによって、「保温機能が長持ち」することにつながるから
↓
なので、無造作に詰め込んでもOK
本記事は「寝袋の”たたみ方”」という記事ですが、ダウンについては、「たたまない!」が正解です。
実は筆者自身も、キャンプ初心者時代はしばらく間違ったたたみ方をしていた一人です。寝袋を買い換えるために某ショップに行った際に、店員さんに「正しいたたみ方」を教わり、「えー!そうだったんですか!?」というリアクションをした記憶があります。
「無造作に収納する」という行為に対しては、なんとも後ろめたさを感じてしまうのですが、理由を知り納得できれば、いくらでもぐちゃぐちゃに詰め込めます。
ちなみに、シーズンオフなどの長期保管時は、「容積の大きい別の袋に入れておく」か「時々干す」などして、「空気を含ませてあげる」ことが大切です。
毎週キャンプにいくようなキャンプフリークな方以外は、保管している時間のほうが圧倒的に長いと思いますので、ぜひ忘れずに。
アウトドアブランドのWAQでは、春〜秋の3シーズンに対応している封筒型の寝袋を販売しています。
左右と足元にはファスナーがついているので、熱く感じるときは中にこもった熱を逃すことも可能。
スマートフォンやメガネなど、なくしやすい小物を収納できる便利な内ポケット付きです。
ソロタイプとファミリータイプの2サイズ展開なので、使用シーンにあわせて選べます。
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寝袋の収納に便利なアイテム2選
素材によってたたみ方が異なることをお伝えしてきましたが、化繊にしろダウンにしろ「比較的小さめの収納袋に入れなければいけない」ことには変わりありません。
ここではそんな時に便利なアイテムを2つご紹介します。
アイテム1.コンプレッションバッグ
1つ目は「コンプレッションバッグ」です。
これは主に、ダウン素材の寝袋を収納するときに活躍するアイテムになります。商品名の通りですが、寝袋をコンプレッション(圧縮)するためのアイテムです。
通常の付属の収納袋に入れたときと比べて、余裕で2/3サイズ、頑張れば半分程度のサイズ感にまで圧縮できます。初めて使ったときは「こんなにコンパクトになるのか!」ととても感動しました。
加えてこのアイテムが優秀な点は、「寝袋以外のものも一緒に入れて圧縮できる」こと。これ最高じゃないですか?
寝袋だけではなく、全体の荷物をコンパクトにしたい登山のときなどは特に重宝するアイテムです。
アイテム2.紐・ベルクロ・荷締ベルト(100均でOK)
2つ目は、「紐やベルト類」です。
こちらは「寝袋から空気を抜いた状態を保つこと」が主な目的になります。筆者のおすすめは、絞りを調整できる「荷締めベルト」です。
寝袋を固く巻いた状態をベルトで固定し、そこからさらにギュギュッと荷締めベルトを締めていくことで、容易にもう一段のコンパクト化が図れます。
化繊はダウンほどの反発力・復元力はないもののある程度膨らんでしまいます。そのため、収納時は「空気を抜いた状態」を保つことが、スムーズな収納のポイントになるのです。
なお、高価なものは不要です。100均で売っているような適当な紐やベルクロなどでも問題ありません。
ちなみに、紐やベルト類はどちらかというと、化繊の寝袋収納時に活躍するアイテムかと思います。
筆者は以前、ダウン素材の寝袋に対して荷締めベルトを使っていました。確かに圧縮はできるものの、ダウンの場合は復元力が高く、ベルトを絞めた分、一方には圧縮できるけれども別方向に広がってしまう、という事態に陥っていました。例えるなら、風船を左右からぎゅっと圧縮したときに、その圧縮した分が上下に膨らんでしまう感じです。
何もしないよりはマシでしたが、ダウン素材の寝袋に対しては「コンプレッションバッグ」が最適解です。
寝袋のたたみ方を押さえて、ワンランク上のキャンパーになろう
寝袋をたたむときは「化繊は丁寧に、ダウンは無造作に」です。
現地で実践する前に、家で練習をしておくのがおすすめです。
実際のテント場では狭いテント内で収納作業をやらなければいけなかったり、テントを張った場所が斜めになっていたりと、作業がしづらい可能性もあります。それに、なんといっても撤収時は何かと忙しいものです。
撤収作業がぐだぐだしたり、あたふたしたりしないように、一度練習しておくと安心です。撤収作業がスムーズな人は、キャンプ仲間からも一目置かれることは間違いないですよ。
適切なたたみ方は、ギアが長持ちすることにもつながります。ぜひ今回の記事で学んだことを今後実践してみてください。
なお、寝袋を長持ちさせるためには、定期的なお手入れも欠かせません。以下の記事では、寝袋をきれいに保つための洗濯方法を、イラスト付きで紹介しています。ぜひこちらもあわせてご覧ください。
寝袋を使用&選ぶ上で欠かせない「限界使用温度」「快適使用温度」については、以下の記事で詳細を解説しています。