ペグダウンは、テントやタープを設営するための基本的な作業です。
どんなに上質なペグを使ったとしても、打ち方を間違えていたら、ペグダウンをする意味がありません。間違ったペグの打ち方をしていると、テントやタープが倒壊したり飛ばされたりする恐れもあります。
また、力任せにペグを抜こうとすると、腰を痛める恐れもあります。
そのため、正しいペグの打ち方や抜き方を理解しておきましょう。
そこで本記事では下記を解説します。
本記事を読み終える頃には、安全なペグダウンの仕方を理解できるでしょう。安全なペグダウンの方法を理解するためにも、ぜひ参考にご覧ください。
ペグダウンとは?
ペグダウンとは、ペグを地面に打ち込む作業のことです。
ペグダウンは、家を建てるときの基礎工事のようなものです。地面にしっかり固定すれば強風や大雨にも耐えられます。
シンプルな作業ですが、ペグダウンをするかしないかで、快適かつ安全にキャンプを楽しめるかが左右されます。
面倒だからとペグダウンせずにいると、ちょっとした風でテントやタープが崩れたり飛ばされたりすることも珍しくありません。
基本的に居住スペースになるようなテントやタープといったキャンプギアには、グロメットの近くにペグダウン用の「ペグループ」が付いています。
テントやタープにペグダウンするときは、グロメットやペグループに打ち込むようにしましょう。
ペグダウンが必要なキャンプギア
ここでは、ペグダウンが必要なキャンプギアについて解説します。
テント
テントの場合は、グロメット部分にあるペグループから地面に直接ペグダウンします。
キャンプでよく使われる「ワンポールテント」「ドームテント」のどちらも、グロメットまたはペグループが付いています。
テントをペグダウンするときは、地面に垂直に打ち込みましょう。
鍛造ペグを使用する場合は、ペグのフックの先端部分が地面に接地するまでペグハンマーで叩きます。
ごく稀に、テントの中に重い荷物を置けば、ペグダウンしなくてもOKだと考える初心者キャンパーがいます。しかし、ペグダウンをしなければテントは安定しませんので注意してください。
また、キャンプを安全に楽しむためには、テントの設営場所にも十分注意しましょう。
以下の記事では「テントを設営していい場所・いけない場所」について解説しています。ぜひこちらも合わせてご覧ください。
タープ
タープを設営する場合は、タープのグロメット、もしくはペグループにポールの先端を通して、その上からガイロープで固定してください。
この順番を間違えると、ポールは固定できても、タープが固定できずに風で飛んでしまいます。
タープは風の影響をもろに受けるキャンプギアなので、強度のあるペグとガイロープを使用しましょう。
たとえば、大型タープをペグダウンする場合、「鍛造ペグの40cm」が理想です。またガイロープの太さは「5mm」あると安心です。
自在金具を付けておけば、ロープワークを覚えなくてもかんたんにテンションをかけられます。
ガイロープの長さは、使用するポールの1.5〜2倍くらいあるとペグダウンしやすいので目安にしてください。
なお、タープのサイズによって、必要なガイロープの長さも変わります。ガイロープの長さを計算する方法については、下の記事で解説しています。
実際にフィールドに出て実測もおこなっているので、「タープに必要なガイロープの長さがわからない」と困っている方は、ぜひ参考にご覧ください。
焚き火用陣幕
焚き火用の陣幕やリフレクターなど、キッチンスペースなどに使うキャンプギアもペグダウンが必要です。
とくに強風時は、風の影響で焚き火の上に陣幕が倒れると火災の原因になるため、しっかりとペグダウンしなければいけません。
焚き火用陣幕やリフレクターは比較的小さなキャンプギアなので、テントやタープに使うような太いペグではなく、軽くてそれなりの強度がある「アルミペグ」や「X字ペグ」でもOKです。
なお陣幕の張り方については、以下の記事で紹介しています。画像つきで、一から手順を解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。
ペグを打ち込むときの4つのポイント
ペグダウンはシンプルな作業ですが、とても重要です。ペグダウン時のポイントはしっかり覚えておきましょう。
ここでは、とくに大切なポイントを4つ紹介します。
ポイント1 ペグとガイロープの角度は90度
ガイロープとペグの角度が真横から見たときに、90度の直角になっていると強度のあるペグダウンになります。
鍛造ペグなら、ヘッドのフック部分が少し地面に触れるまで、しっかりとペグダウンしてください。
ピンペグのように、ペグがL字になっているものは、ガイロープが抜けやすいので注意が必要です。
そのため、地面に埋まるまでペグダウンしたほうが安全です。
ペグダウンしたあとは、ガイロープを引っ張って、しっかり地面に刺さっているか確認しましょう。
ポイント2 地面がやわらかい・悪天候のときは「クロス打ち」
場所によっては地面がやわらかく、ペグを打っても固定しにくいときがあります。また、雨が降ると地面がゆるくなるので、ペグダウンしても抜けやすいです。
そんなときは、ペグを2本使った「クロス打ち」で対応しましょう。
クロス打ちは、ペグダウンした1本目のペグを「2本目のペグで固定する」ようなイメージで打ち込みます。
2本目を打ち込むときは、1本目のペグと反対方向から、同じ角度から打ち込むとよいです。
クロス打ちしたあとに、2本のペグ同士がくっついた状態になっていれば成功です。
もしペグ同士がくっついていなければ、クロス打ちが正しくできていません。「ペグ同士をくっつける」ことを意識して、再度ペグダウンしてみてください。
ポイント3 風が強い日は「三角打ち」
風が強い日は「三角打ち」で対応しましょう。「三角打ち」は、クロス打ちよりも強度のある打ち方です。
三角打ちの方法は、すでにペグダウンしてあるペグの真横にペグを打ち込むだけです。
慣れないうちは、ガイロープの長さを自由に調節できる自在金具を利用した方が、三角形を作りやすいです。自在金具を起点にして、三角形を作るイメージでペグを打ち込みましょう。
ポイント4 キャンプサイトが狭いときは「L字打ち」
フリーサイトがないキャンプ場では、区画が制限されているので大型テントを設営するには狭いときがあります。
そんなときは「L字打ち」がおすすめです。そうすれば狭いサイトでも大型テントを設営できます。
L字打ちの方法は、ガイロープがL字になるようにペグを2箇所仮止めし、そのあと、微調整しながらペグダウンするとうまく打てます。
L字打ちをする際も、ガイロープを自由に調節できる自在金具が付いていると、微調整しやすいです。
ペグを抜くときの2つのコツ
地面に深く刺さったペグをそのまま力任せに抜こうとすると腰を痛めるリスクがあります。
そのため、少しの力でペグを抜くコツを覚えておきましょう。ポイントは「回転とテコの原理」です。
それでは詳しく解説します。
コツ1 ペグを回転させてから抜く
ペグを回転させると、地面とペグの間に隙間ができて抜けやすくなります。
このとき、ペグハンマーの柄の部分にあるフックを使うと便利です。刺さったペグを1〜2周ほど回転させれば、抜けやすくなります。
ペグハンマーがないときの対処法
ペグハンマーがないときは、余ったペグを使って回転させましょう!
鍛造ペグなら、ヘッド部分に空いている穴にペグを通せば回転できます。
ただし、このときアルミ製のペグは使わないでください。アルミ製のペグはやわらかく、ペグの中では強度が弱めなので、かんたんに曲がってしまいます。
コツ2 テコの原理でペグを抜く
地面に刺さったペグのヘッド部分にペグハンマーを引っかけて、テコの原理で持ち上げるとかんたんに抜けます。
ペグを回転させずに抜きたいときは、テコの原理を上手に活用してください。
先述したように、アルミ製のペグだと曲がりやすいので、テコの原理で真っ直ぐ抜いてあげるとよいです。
ペグハンマーがないときの対処法
鍛造ペグのヘッド部分に余ったペグを引っ掛けて持ち上げます。回転させてからテコの原理を使えば、ペグハンマーがなくてもかんたんに抜けます。
なおテコの原理を利用する際は、長いペグほど効果があるので、30cm以上のペグがおすすめです。
初心者が間違えやすいペグダウン失敗例
ペグダウンに失敗すると、テントやタープがうまく設営できず、ケガや事故につながりかねません。
そのため、ここでは初心者が間違えやすいペグダウンの失敗例を2つ紹介します。
失敗したときの危険を知っておけば、安全に配慮したキャンプをおこなえるようになります。
失敗例1 強度が足りずペグが抜ける
地面がやわらかすぎたり硬すぎたりしてしっかりペグダウンできていないと、ペグの強度が足りず、抜けてしまう恐れがあります。
フィールドの状況に合わせたペグの種類を選んで、ペグの返しまでしっかりと打ち込むようにしましょう。
なお、一度ペグが抜けた場所に、再度ペグダウンするのは避けてください。なぜなら、同じ場所にペグダウンしても抜けてしまう可能性が高いからです。できれば10cm以上離れた場所にペグダウンをしましょう。
どうしても同じ場所に打ち込むしかないときや、地面がやわらかすぎる場合は、先述した「クロス打ち」「三角打ち」で対応してください。
また、強風の場合はペグに大きな負担がかかります。そのため、たとえ正しい打ち方でペグダウンしても、1本のペグで耐えられるとは限りません。
ガイロープにつながった重いペグは、場合によっては凶器になることもあるので注意が必要です。たとえば、強風でペグが抜けた場合、ガイロープにつながったペグに遠心力がついて、人に刺さったり車のフロントガラスを割ったりする危険があります。
風が強い場合は、危険防止のためにも以下の手段をとってください。
- クロス打ちで強化する
- ストレッチコードを使う
上記のストレッチコードについては、次で紹介します。
ストレッチコードを使うと強風にも耐えられる
ストレッチコードとは、伸縮性のあるゴム紐のことです。
ガイロープとペグの間にストレッチコードを使うと、風による衝撃を吸収しペグにかかる負担を軽減できるので、強風に耐えられるようになります。
100円均一で売っているもので十分な役割を果たしてくれます。
失敗例2 ペグの角度を間違える
初心者が間違えやすい失敗例の一つが「ペグの角度を間違える」です。ガイロープとペグの角度が、90度の直角になっていないと、ガイロープがすっぽ抜けてしまうことがあります。
たとえば、ペグがしっかり地面に刺さっていても、ペグの角度を間違えるとガイロープがゆるんだときにペグから外れてしまいます。
そのため、ペグダウンをしたあとは、下記のことを必ず確認しましょう。
- ペグの角度が間違っていないか
- しっかりとテンションがロープにかかっているか
- ペグのヘッド部分が地面に接しているか
ペグダウン後に、少しでも違和感があったら打ち直してください。
以下の記事では、「ペグダウンをしなかったため、テントが吹き飛ばされた」「ペグの強度不足でテントが崩壊した」など、キャンプでの失敗談を紹介しています。ペグダウン以外にも、先人たちのさまざまなキャンプ失敗例を4コマつきで紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
ペグを打つときの3つの注意点
ペグを打つときの注意点も一緒に覚えておきましょう。
注意点1 ペグに蛍光色のロープを付けて紛失を防ぐ
ペグの紛失はキャンプあるあるの一つです。
ペグの色には黒やシルバーなどが多いので、抜いたペグを地面に置いてしまうと、土の色と同化してしまって紛失することがあります。
解決方法は、蛍光色のロープをヘッド部分に結ぶことです。それだけで紛失防止になります。蛍光色のロープは暗くなってからも目立つのでおすすめです。
またグルキャンやデュオキャンなど、複数人でペグを使い回しするときも、目印が付いていれば紛失防止になります。シールの目印だと剥がれてしまうのでロープの目印にしましょう。
さらに、何本ペグを使用するか「設営前に数えておく」ことも忘れないようにしましょう。
注意点2 ペグハンマーのヘッド部分をチェックする
ペグダウンする前に、ペグハンマーのヘッド部分にグラつきがないかチェックしてください。
なぜなら、安全ベルト付きのペグハンマーであっても、ヘッド部分だけが飛んでいってしまうことがあるからです。少しでもグラつきがある場合は、危険なので使ってはいけません。
ペグハンマーが壊れて使えないときは、太めの薪で叩いたり、他のキャンパーに借りたりして対応しましょう。
注意点3 ロープライトを付けてつまずき防止対策をする
周囲が見えにくい夜間に、ガイロープに足をひっかけてつまづいてしまうのもキャンプあるあるです。最悪の場合、転倒してケガをする恐れもあります。
つまづき防止のために、ガイロープに小型のロープライトを取り付けると安全性がアップします。その他にも、蓄光タイプのものやライトがついているペグもあるので、使いやすいものを選んでください。
とくに、ファミリーキャンプなど小さな子どもがいるならロープライトは必須です。子どもが転んで怪我をする前に対策をしておきましょう。
正しいペグの打ち方・抜き方を覚えて安全にキャンプを楽しもう
安全・快適なキャンプをするためにペグは必須のキャンプギアです。ペグダウンはシンプルな作業ですが、一歩間違えると大怪我をする危険があります。
周囲に迷惑をかけてしまう可能性もあるので、初心者が間違えやすい失敗例にも注意しながら、本記事で紹介した知識を活かして正しく安全にペグダウンしましょう。
ペグの打ち方とあわせて、ガイロープの結び方もマスターしておくと、設営作業をスムーズに進められます。以下の記事では、「もやい結び」や「自在結び」など、キャンプで役立つロープの結び方を画像つきで解説しています。ぜひ参考にしてください。